挽歌~父の死,母の死に関して詠んだ短歌
拙個人公式WEBサイト「Noblesse Oblige カミタクの部屋」内の「短歌の部屋」掲載の拙歌や、一部数首の歌は拙個人公式ブログ「カミタク・ブログ」の日記「母を偲ぶ拙歌9首(2006年12月30日 (土))」と重複するのですが、2006年11月11日の母の死、2007年8月5日の父の死を受けて、アララギ後継誌『短歌21世紀』所属アララギ歌人として詠んだ挽歌を、以下のとおり載せます(3~4首程、『短歌21世紀』の選の漏れた落選非掲載歌も含みます)。
○ 母の死
死の床の母に会ひたし飛行機の速さも今の我にもどかし
あんなにもおしやべりだつた母なれど眼(まなこ)は開けど口は動かず
子の我を知覚してゐる様子なしせめて眼(まなこ)の反応を見たし
故郷(ふるさと)は横浜は街の隅々に母の思ひ出が満ち満ちてをり
太りてゐし母なり今は細々と骨皮だけの足になりたり
去年(こぞ)の今日母と歌舞伎を見し思ひ出繰り返し繰り返し父は語りぬ
ずつとずつと暖かなりし母の額我が着きし時既に冷たし
遺体とはいへども形のある母とこの家にゐ得る最後の夜なり
あと二時間あと一時間母の遺体が我が家を出(い)で行く時近づくも
お母さん嘘でもいいから目を開けて焼かれてしまふ前に逃げてよ
子守歌歌ひてくれしのど仏はかくも小さき骨になりたり
暖かつた手はどこだらうばらばらの骨からは既に知る術も無し
母の遺骨を持たせて貰へばこんなにも軽くなりたりこんなにも軽く
一緒に俺も焼いて欲しかつたと泣く父の傍らにをりなす術もなく
お母さんねえお母さんお母さん呼べども呼べども今は答へず
旅行ガイド開きて母との思ひ出を父と語れど過ぎし日はるけし
鹿児島に母が来てくれし日よわづか一年半前今日を思はず
夢に母が会ひに来てくれたりと気づくその瞬間に目覚めてしまふ
母と来し駅前の店しみじみと今日は父と二人入りたり
横浜に帰れど二度と会ふことは叶はぬ母よ故郷の部屋よ
○ 亡き母
城山のホテルを見れば今もまだ母が来てゐるやうな気がする
去年実家に贈りし鹿児島の黒き酢を喜びし母はこの世にゐない
母と行きし猊鼻渓がテレビに映りをり涙が一筋流れ落ちたり
このリスの写真を撮りし時わが側には母がゐしと気づきぬ
霊などは信じて来ざりき我なれどいつかあの世で母に会ひたし
嘘だよね死んぢやつたなんて嘘だよね横浜に帰ればまた会へるよね
亡き母と行きし山川の植物園に行きたり母に会ひ得る気がして
二年前ここには父と母がゐしと思ひたる途端に涙止まらず
わづか二年前の幸せなりし日が今では遥けく思ほゆるかな
我が節句人形を孫に飾りたき母の願ひは空しくなりぬ
目覚むれば母の遺影が部屋にありかつてはお早うと起こしてくれき
何時まで起きてゐるのよ父と我を叱りし母の声は聴き得ず
母の形見のネクタイピンをなくしたり見つからぬまま転居せねばならず
○ 父の死
父の死を告ぐる電話は嘘だよと思ひたし実家に電話をかくる
独りきり発見されないまま父はここに倒れてゐたのかと思ふ
あの夜にせめて電話をかけてゐたらすぐに発見されたのだらうか
父の遺体と母の位牌の間に寝る幼き頃の川の字のやうに
父と共に二人の最後のこの夜は眠り得ぬまま窓白みゆく
誰もゐない分かりてをれども玄関を開くれば言ひたりただいまと二度
父が出てくれさうな気を捨てきれず今宵も実家に電話をかけたり
父の死亡叙勲の品が着く夕べ生きてゐてくれし証を願ひて
話しても話尽きざるこの午後は墓石の前を離れ難しも
◎ 平成20年(2008年)短歌作品(の内、本日現在で掲載された分まで)
吾が送る旅の土産を喜びし母のハガキの来ることはなし
電池入れて父との思ひ出の鳩時計稼働を確認して実家を出で来ぬ
父からのメールがウザいと言ふ若き友は来ぬ日を思ひてをらず
孤独死をさせてしまひしといふ思ひ半年過ぐれど消ゆる時なく
父の声も母の声もせぬ電話機よ呼び鈴だけは昔と変はらず
夢に出でてくれたる父は心配でたまらずといふ顔をしてをり
『短歌21世紀』や、歌集『赤光』中の有名な連作「死にたまふ母」を残した斎藤茂吉などアララギの大先人達には比べるまでもなく足下にも及ばない出来具合ではありますが、私の悲しい思いを芸術に昇華させようとすると上述のようになります。せめて芸術に昇華させようとしない限り、余りにも悲しくて悲しくて辛過ぎます。
◎ このページに関連する他の方のブログの記事(挽歌,父の歌,母の歌など)
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○ 日本における火葬の始まり(柿本人麻呂の挽歌) (壺 齋 閑 話)
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○ 平成万葉歌仙(五)「挽歌・志(こころざし)」の巻(十)|freeml
○ sylphid : 柿本朝臣人麻呂、妻死にし後に、泣血哀慟して作る歌
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○ 母の死・その2
○ 今度は父の死亡
○ もう一度お父さんとお母さんの子供に生まれて来てもいいですか
○ 父の死の状況
○ 父の孤独死
○ 1年前の昨日
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