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2017年1月30日 (月)

米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)

  当日記は、【mixi】米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)(1/3)【mixi】米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)(2/3)【mixi】米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)(3/3)と同じ内容の@niftyココログ(注)版です。
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 今年(平成29年(2017年))正月に、学部学生時代(慶應義塾大学商学部)の親友達と行った新年会で、平成29年(2017年)に合衆国大統領に就任した米国のドナルド・トランプ(Donald John Trump)大統領の話題が出ました(新年会時点では就任直前)。その際には、「トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた」と言ったところ、、「事後に行っても後出しジャンケンだ」と指摘されてしまいました。ちなみには、ドクター・コース(大学院博士課程(高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻起業家コース博士後期課程(注2)))で経営学を専攻する等、今日では経営学徒ですが、マスター・コース(大学院修士課程(東洋英和女学院大学大学院修士課程社会科学研究科(注3)))までは計量経済学(というよりはむしろ、実証理論経済学)専攻でした。以降の話は、経営学徒としての私ではなく、経済学徒としての私の意見になります(注4)。
(注1)これは客観的な予測の問題であり、私がトランプ氏を支持していたことを意味する訳ではありません。誤解を避けるべく念のため。なお、当日記は学問についても述べる場ではあっても政治ネタのブログではありませんので、平成28年(2016年)の米国の大統領選挙でトランプ氏とヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)氏のどちらの方に大統領になって欲しいと望んでいたかについては、言及を行わないことにいたします。
(注2)東京と大阪でもサテライト・キャンパスで会社を休まずに土日に授業を受けられる社会人向け土日開講大学院です。
(注3)東洋栄羽は学部は女子大ですが、大学院は社会人向け夜間共学の大学院です。
(注4)経済学と経営学は、よく混同されがちですが、異なる別の学問です。平たく乱暴に一言で申せば、経済学は市場に関する学問であり、経営学は組織に関する学問です。もちろん、学際的な境界領域はあります。

 事前の予測理由は後回しにして、後年、「後出しジャンケン」にならないようにするために、トランプ政権で米国の経常収支、特に貿易収支がどうなるかについて、現時点の私がどのように予測しているかについて、当日記記事で述べておこうと思います。結論から先に申せば、貿易収支黒字化を目指す米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、その思惑(おもわく)とは逆効果で、米国の貿易赤字をさらに増加させる可能性が高いと、私は考えます。

 当段落以降の数段楽で、前段落の予測についての理由を述べます。まず、前提となる予備知識として経常収支と貿易収支に関して解説すれば、両者の間の関係は、財務省ホームページ用語の解説から引用すれば以下のとおり定義されるものであり、国際収支統計における概念です。

経常収支 = 貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支
    = 貿易収支 + サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支

 マスコミ報道によれば、トランプ大統領は米国の貿易赤字を問題視していて、米国自動車メーカーや我が国(日本)の自動車メーカー(トヨタ)に対して、米国内での工場建設を促しています。まず、事実として本当に米国の経常収支や貿易収支が赤字であるか否かについて見てみましょう。関連する米国の統計指標として、OECD(経済協力開発機構)公式WEBサイト(http://www.oecd.org/)・Data(https://data.oecd.org/)のCurrent account balance(経常収支)Trade in goods(財の貿易)(Exports(輸出)とImports(輸入))Household savings(家計貯蓄)Investment (GFCF))(設備投資(総固定資本形成))によれば、以下のとおりです。

米国
年         2011年   2012年   2013年   2014年   2015年
-------------------------------------
経常収支(GDP比)   △2.97%  △2.76%  △2.20%  △2.25%
輸出(単位:米ドル)1,499,240 1,562,579 1,592,002 1,633,321 1,510,303
輸入(単位:米ドル)2,239,885 2,303,749 2,294,247 2,385,489 2,272,868
家計貯蓄        6.2%   7.9%   5.2%    5.8%    6.0%
(可処分所得比貯蓄率)
設備投資        3.7%   6.3%   3.0%    4.2%    3.7%
(総固定資本形成)
(対前年比成長率)

 経常収支や家計貯蓄、設備投資が金額ではなくGDP比、可処分所得比、対前年比成長率だったりして単位が揃わないため軽々には指標間の比較がでいないのですが、経常収支が赤字だったり、輸入から輸出を引いた貿易収支が赤字だったりすることが分かりますので、米国の経常収支や貿易収支が赤字であるとするトランプ大統領の認識自体には、事実誤認や思い込みは無く、事実どおりであることが分かります。

 ここで、「赤字」という用語の語感が、(恐らくはトランプ大統領も含む)経済学を習得していない方々に与える誤解が、問題になろうかと思います。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』国際収支統計にも載っているとおり、国際収支統計は財務諸表における損益計算書(P/L)ではないため、経常収支や貿易収支が赤字であることは「損失」を出していることを意味する訳ではなく、単に輸入が輸出を超過している状況を指しているに過ぎません。「貿易黒字は良いことだ」とする重商主義的発想は、実は理論経済学の基礎理論では正当化し得ないのです。以前の拙日記「官僚たちの夏:日本の綿製品(繊維産業)の対米輸出自主規制(感想)」と重複する内容になりますが、詳しく解説します。中学レベルの数学があれば理解可能な説明ですので、我慢して読んで下さい。いま、Y:国内総生産(GDP),C:民間消費,G:政府財政支出,I:民間投資,X:輸出, M:輸入とすると、総支出面から表した国民所得は、

(1)  Y=C+G+I+(X-M)

となります。ここで、S:貯蓄とし、貯蓄は所得から消費を引いたものであるという定義を表す(2)式

(2)  S=Y-(C+G)

を変形した式

(2') Y=S+C+G

を(1)式に代入すると

Y = S+C+G
  = C+G+I+(X-M)
∴ S+C+G=C+G+I+(X-M)
∴ S=I+(X-M)

∴ (3)  S-I =X-M

となります。つまり、貿易黒字(X-M>0)は国際経済学の基礎理論の上では貯蓄超過(S-I>0)によって起きるのであり、輸出競争力で起きるのではないのです。もちろん、個別産業では輸出競争力がある産業もありますが、一方では無い産業もあり、「国全体では、輸出競争力によって貿易黒字が成り立つ訳では無く、貯蓄超過額と貿易黒字が一致する」ということになります。この貿易収支の黒字は国の(産業)競争力で決まるものではないという点が、重商主義的発想が誤りである理由になります。この辺りの発想は世間では余り理解されていないことですので、「世間知」と「専門知」との間のギャップが激しい内容になります(注)。
(注)ただし、自国通貨が基軸通貨ではない場合には、外貨保有高が不足すると輸入代金を支払えないという問題があり得ますので、この見地からの貿易黒字の必要性はあるかも知れませんが、米国の場合には自国通貨が基軸通貨ですので、この問題は、少なくとも短期的には無視可能です。

 言い換えれば、経済学の見地からは、国の競争力は、定義できないものだということになります。このことは、そのような概念の対象となる事象が絶対に存在しないということを申している訳では無く、「(他の見地から見ても、経済学上は)定義ができない」ということを意味しているに過ぎません(誤解を避けるべく念のため)。したがって、何らかの世の中の言説に遭遇した場合に、それが、真っ当な経済学徒の見解であるのか、「例えばエコノミスト等を自称してはいても、実は経済学の基礎理論に立脚していない人物」の見解であるに過ぎないかを区別して「だまされないようにする」ための切り分けポイントの中の一つは、「国に関して『競争力』の語を安易に用いているか否か」になりますただし、このようなことを踏まえた上で文脈上「競争力」の語を経済学徒が使う場合が「絶対に無い」とは言い切れませんので、この切り分けポイントは「傾向」に関する話ではあっても、絶対的な切り分けポイントではありません(誤解を避けるべく念のため)。

 ここで、トランプ大統領の対自動車工業所属企業に対する働きかけは、メキシコに工場を作らせず、米国国内に工場を作らせるというものですので、上記の(3)式においては、投資Iを増加させようとするものです。上記のOECDデータにおける投資Iや貯蓄Sが絶対額ではないため軽々には断言できないのですが、米国の貿易収支(=X-M)が赤字であるということは、米国国内では投資Iが貯蓄Sを上回る投資超過が起きていることになります。したがって、現状よりもさらに投資Iを増やそうとする政策ば、貯蓄Sの増加を伴わない限り、トランプ大統領の意図とは180度真逆の「貿易赤字が、さらに拡大する」効果をもたらす方向に作用するであろうことが、(3)式から分かるということになります(注1)。これが、冒頭で述べた予測の理由になります。
(注1)ただし、現実の経済は変数がこれだけではなく、かつ、各自動車メーカーの米国内工場増強表明が「実は以前からの計画どおりで、『作文』的にトランプ大統領に応えただけであり、その意味においてトランプ政策の影響は実は無い」旨の可能性も否定はできませんので、必ずこうなると言う訳ではなく、異なる結果になる可能性はあり得ます。実証科学のモデルに基づく科学的予測とは、「モデルにインプット変数を入れると、アウトプット変数が出て来る」類のものであり、この点で、「インプット変数が無くても結果が導き出される」占いや予言の類とは異なります(注2)。言い換えれば、科学的予測とはインプット変数(条件)付きの予測であり、「この条件だったらこうなる」というシミュレーションには用いることは可能ですが、「想定条件はどうでも構わないから、結果だけ教えろ」という需要に応えることは、できません。
(注2)余談ながら、カール・ポパー流の(実証科学の)方法論の見地からは、いわゆる超能力としての予知能力は、実は否定されてはいませんが、逆に肯定されている訳でもない、と思います。「現時点の人類の実験・観察技術」ではこの手の現象に対しては、「反証可能な実験計画」を立てることができないため、現時点では実証科学の守備範囲ではない」というのが、最も適切な見方であろうと思います。言い換えれば、いわゆる超能力については、「現時点で人類が有する実験・観察技術の下では、「科学的好奇心の対象である」ということになります。

 なお、経済学の基礎理論から分かることとしては、保護貿易よりも、自由貿易の方が実は各国共に豊かになることが挙げられます。国際経済学の上では、比較優位の理論や、実証研究の結果当てはまらない事例が多いという指摘もあるもののヘクシャー・オリーンの定理等により、自由貿易が望ましいとされています。この点について詳しくはここでは触れませんので、野口 旭『グローバル経済を学ぶ』(筑摩新書,2007)や、基礎的な国際経済学の教科書をご参照下さい。

 

 

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 また、国際政治学の見地からも、自由貿易は国際平和のためにも重要であるとされています。その理由は、第一次世界大戦第二次世界大戦の間の戦間期の、例えばスムート・ホーリー法ブロック経済化等の保護主義の応報が第二次世界大戦の遠因の一つになった経験則に立った反省からは、自由貿易は国際平和のためにも重要である旨が分かったからです。この経験則が戦後のGATT(関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade))締結の契機になり、やがて、今日のWTO(世界貿易機関(World Trade Organization))の設立になりました。

 ここで、貿易摩擦が起きる理由について考えてみましょう。ここでヒントは、産業構造の変化です。前段落の話は、保護主義は経済学上是とされないということですが、実は例外的に、これから成長する産業の後押しを是とするドイツ歴史学派の幼稚産業保護論という学説はあります。しかし、衰退産業の保護を是とする経済理論はありません。ですが、実際には保護主義が湧き起こるのは、経験則上、先進国では衰退産業の保護である場合の方が多いです。

 それは、野口『前掲書』にも載っているように自由貿易にはメリットだけでなくデメリットもあり、産業構造の変化によって輸出競争力を失って衰退産業と化す産業が発生し、そこでは倒産や失業の痛みが伴うからです。ですから、政策的課題としては、新たな産業を創出して、そこに雇用を移して痛みを和らげることにより、デメリットをメリットで相殺(そうさい)することが、「政策=あるべき処方箋」になります

 余談ながら、「経済学は何の役に立つのか?」と訊かれる場合が多いですが、このように、世の中の動向を読む場合に役に立つと、私は思います。我が国(日本)自体の経済動向の行く末も我が国の政策で異なり得る以上、私達一人一人の一般の日本国民の立場では、選挙における投票の際に判断ミスを行わないようにする際に、役に立つ学問であると言えます。民主主義は、意思決定手続きの正統性を保証するものではあっても、意思決定結果の妥当性を保証するものではないので、我々が適切な投票を行わない場合には、民主主義は容易にポピュリズム(populism)に陥ってしまいます。ポピュリズムを回避するための複数ある手段の中の一つは、様々な学問分野を「単に覚えるだけでなく、それをツール(道具)として使って、『事実に基づいて理論的に分析する』ことができるようになる」であり、そのための学問分野の中の一つが、経済学であるという訳です。

 話を本題に戻します。さて、米国が日本からの貿易攻勢にさらされているとするトランプ氏の認識は事実どおりでしょうか?トランプ大統領の対日貿易観は、1980年代~1990年代半ばの日米貿易摩擦時代の対日観のまま、固定観念的にこり固まっているように見えます。東経数字で検証してみましょう。

 上述したOECDのデータと、さらに我が国(日本)の対米数字を財務省ホームページ地域別国際収支の推移(国際収支マニュアル第5版準拠:平成25年まで)で参照すれば、我が国の状況は以下のとおりとなります。

日本
年             2011年  2012年  2013年  2014年  2015年
-------------------------------------
輸出(単位:米ドル  )  790,941 776,445 694,931 699,830 622,169         
輸入(単位:米ドル)    795,433 829,900 784,575 799,730 627,379         
家計貯蓄          2.6%  1.4%  0.0%  -0.5%
(可処分所得比貯蓄率)
対米経常収支(単位:億円) 59,179  72,596  89,137
対米貿易収支(単位:億円) 41,078  50,429  59,735

 驚かれる方もおられるかも入れませんが、上記の統計数字からは、米国だけでなく他国も含めた全体での日本の貿易収支は、2010年代の今日、赤字になっています。先述した国際経済学の基礎理論のモデルに基づいて考えれば、貿易赤字(X-M<0)であるということは、投資超過(I-S>0)であることを意味します。日本人が高貯蓄率であるという巷間よく言われてきた話は、家計貯蓄の貯蓄の絶対額や貯蓄率は別にして、家計以外の貯蓄も加えた上で投資Iとの相対比で見れば、今日では投資を上回る程ではないということになります。このことは、「日本が輸出立国(注)である」という概念が今日では過去の遺物と化したことを意味すると同時に、人口の急激な高齢化が進む我が国において今後どうすべきかという見地からは重大な状況変化であり、さらに、政府の膨大な財政赤字がこのままで良いのか、という課題も示唆するものと私は考えます。
(注)輸出立国という発想自体が重商主義的であるか否かは、また別儀。

 日本の国内事情はさておき、このように貿易収支が赤字と化した日本において、個別の国単位に二国間関係で見れば、対米貿易収支は黒字であることが、上記の統計数字から分かります。したがって、トランプ大統領の重商主義的発想が経済学の見地から見て誤りであるとは申せ、同大統領が対日貿易赤字を指摘している点については、米国の対日貿易収支が赤字である旨自体は、事実どおりであることになります。

 しかし、1980年代~1990年代半ばの日米貿易摩擦時点の対日観そのままに、「日本には非関税貿易障壁があるから、米国車が売れない」とするトランプ大統領の我が国(日本)の自動車市場観は、事実どおりではないという意味で間違っていると思います。その理由は、我が国ではベンツやBMWの車がよく売れている旨の事実が示すとおり、むしろ一定の確率で輸入車志向があるからです。米国車(いわゆるアメ車)が米国自動車メーカーの思うとおりに売れない理由は、日本市場が輸入車(外国車)を非関税障壁で締め出しているからではなく、日本市場の消費者ニーズに応えられる商品開発を米国自動車メーカーが行えていなかったからだと思います。経済学だけであく経営学やマーケティングの見地から言い換えれば、厳しい言い方をすれば、米国自動車メーカーが日本市場攻略に失敗してきた理由は、日本市場に対するマーケティング戦略で失敗してきたからであると、言えると思います。

 したがって、トランプ大統領が日本の自動車市場に関して政策を立てるとすれば、トランプ大統領にとっての最も適切な手は対日圧力的交渉を行うことではなく、真っ当なマーケティング戦略を立てるようにするべく、米国自動車メーカーのケツを叩くことであろうと、私は思います。もちろん、ここでマーケティング戦略とは商品開発まで含めてのことです。

 何はともあれ、1980年代~1990年代半ばの日米貿易摩擦の時代とは異なり、1980年代~1990年代半ばのバブル景気が崩壊して以来の「失われた20年」で日本企業がガタガタになった今日では、日本人としては、トランプ大統領の対日貿易観は、「1980年代の対日観のまま、固定観念的にこり固まっている」、言い換えれば「日本企業が過大評価されている」ような違和感を感じざるを得ません。有り体(ありてい)に申し上げれば、困ったものだと思います。

 さて、冒頭で述べたとおり、「(平成28年(2016年)に)私が、トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた(注1)」理由は、日米共にメジャーなマスコミが、トランプ氏の支持母体が白人貧困者労働階層である旨だけを強調していたことと、「白人エスタブリッシュメント層に『隠れトランプ・ファン』がいる」旨が新聞紙で申せば「1面トップではなく、真ん中のページに出ていた」こととのAND条件だったたからです。最近の若い人達のマスコミ不信感の文脈と同一のものではない旨を前提として読んでいただきたいのですが、日本のマスコミは、自分が報道したい方向性にとって都合が悪い事実を隠す傾向があります(米国については、また別儀)。ところが、日本のマスコミの行動パターンにはおもしろい経験則があり、この場合に合致するニュースでは、1面トップには載せないのに100%完璧に隠し通すこともせず、真ん中のページに載せる場合があることを、経験則で私は知っていました(注2)。
(注1)これは客観的な予測の問題であり、私がトランプ氏を支持していたことを意味する訳ではありません。誤解を避けるべく念のため。なお、当日記は学問についても述べる場ではあっても政治ネタのブログではありませんので、平成28年(2016年)の米国の大統領選挙でトランプ氏とヒラリー・クリントン氏のどちらの方に大統領になって欲しいと望んでいたかについては、言及を行わないことにいたします。
(注2)具体例については、「この場は政治ネタの場ではない」旨の当日記編集方針に抵触するので、明らかにしない旨を許して下さい。

 平成28年(2016年)の米国の大統領選挙においては、「白人エスタブリッシュメント層に『隠れトランプ・ファン』がいる」旨は、正にこのモデルに当てはまった報道が行われていました。このことは、実は、「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」の存在が、実は軽視できない確率で存在する可能性を示唆する「報道に関する現象」だと、私は思いました。したがって、白人貧困者労働階層だけに注目して、「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」の存在を無視した分析を行うと、読みを間違えるリスクが生じると考えた訳です(注)。このことが、私が、平成28年(2016年)の米国の大統領選挙の投票日以前の時点で、トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた理由です。
(注)どうやら米国国内の報道でも日本同様に、トランプ氏の支持母体については「白人貧困者労働階層からの支持」偏った報道を行っていた模様ですので、詳しい事情は存じ上げませんが、日本のマスコミと同様であった可能性を否定できません。

 もちろん、トランプ氏の主要な支持母体が白人貧困者労働階層であったであろう旨は事実どおりであり、上記の分析は、この点に対するアンチテーゼでは、ありません。私が注目した点は、「支持母体は、それ以外にもあるだろう」という点ですので、問題は支持母体の構成上の比率の問題であるに過ぎません。この点については、誤解無きようお願いいたします。

 なお、米国の白人貧困者労働階層の窮状を、トランプ大統領のように「他国からの貿易戦争で職が奪われている」という見地からではなく、「米国内には、異常なまでの所得格差がある」という見地から捉(とら)えた場合には、当日記の趣旨からは外(はず)れますので詳しい解説は省略しますが、トランプ大統領の経済政策は、「所得格差の解消を目指したもの」ではなく、かつ「社会のセーフティ・ネットを無くす」方向のものという印象を抱いておりますので、逆効果なのではないかと予測します。「不法移民のために、何故俺たちのカネを使わなければならねぇんだ?」という米国の白人貧困者労働階層の心情的な不満に近視眼的に応えるものにはなっているのかも知れませんが、格差が拡大して白人貧困者労働階層がさらに経済的に困窮していくような状況をもたらすリスクが高いのではないか、と思います。この点については、さらなる言及は避けます。

 話を元に戻します。ではなぜ、「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」なる人達が出現したのでしょうか?ここから先は確認した上での事実ではなく推測であるに過ぎない旨を、お含みいただいた上でお読み下さい。

 「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」なる人達が存在した理由は、結論から先に申せば、「ポリティカル・コレクトネスの見地から、『正しい』と言わなければいけない点の中で、宗教右派(言葉を選ばずに申せばキリスト教原理主義者)の立場の人達にとっては、むしろ宗教道徳上『悪』であるものがあった」ことについて、「我慢できない」という思いがあったからであると推測します。誤解避けるために予め補足すれば、この問題は、通常の「語ってはならない真実」とは異質の現象ですので、混同されぬようお願いします。どのような点が異質かと申せば、通常の「語ってはならない真実」の場合には、一定の確率で「建前の方が、建前上は正しい」場合が多いかと思いますが、ここでの「宗教右派の見地から我慢ができない」モデルの場合には、「建前で『正しい』とされることが、或る宗教・思想的な立場では『建前上も、むしろ悪である』場合がある」点が、異なっている点だと思います。キリスト教ユダヤ教イスラム教も同様であり、以降、「砂漠発祥系一神教」と総称します)は日本では一神教である点が我が国(日本)の伝統的宗教との相違点であるとよく思われていますが、実は、一神教であるか否かよりも、「神が万物の創造主であり、ヒトは単なる創造物であるに過ぎない。道徳も神が創造したものであり、たかが創造物であるに過ぎないヒトが、抗うことは許されない」とする世界観がある点の方が、我が国の宗教との本質的な相違であろうと私は考えます。単に一神教というだけであれば、我が国の宗教でも日蓮宗浄土真宗浄土宗等の類の仏教宗派は実質的には一神教的だと言えなくもないと思いますが、「創造主がいて、ヒトは創造物であるに過ぎない」という発想は無いであろう点が、むしろ最大の相違点だと思う訳です。

 ここで日本人ならば当然思い浮かぶ感想は、「その点を悪だとすると、心が傷つく人がいるのではないか」というものになります。しかし、宗教右派的な「教義」の下では、「たかが創造物であるに過ぎないヒトが傷つくかどうかという問題」は、「創造主が定めた道徳が施行されないこと」よりも優先順位が低い課題になります。その理由は正に、「ヒトは創造物であるに過ぎない」点にあります。ノアの方舟ソドムとゴモラの例に示されるとおり、「砂漠発祥系一神教」においては、神とは気に入らなかったら人間を滅ぼす神であり、この場合、「滅ばされる側の、神が悪と見なした人間が、神に滅ぼされることをどう思うか」ということは考慮の対象にはならない宗教です。この点は、「砂漠発祥系一神教」の信者ではない我々日本人には、初めて知る方にとっては極めて強烈な違和感を感じる点ですが、「砂漠発祥系一神教」とは、そのような教義体系の宗教であると思います。したがって、宗教右派の人々にとっては、「語ってはならない真実の方が宗教道徳上、正しい」場合には、「ポリティカル・コレクトネス上『是』としなければならないこと」に対しては、単なる不快感だけにとどまらず、罪悪感さえ覚えるであろうと、推測する訳です。

 具体的にどの点が、「ポリティカル・コレクトネスの見地から『正しい』と言わなければいけない点の中で、宗教右派の立場の人達にとっては、むしろ宗教道徳上『悪』であるものがある」場合に該当すると私が考えているかについては、明らかにしないままで済ませることを許して下さい。その理由は2点あります。理由の1点目は、当日記の趣旨は政治ネタを扱う場ではありませんので、この点をさらにこの場で深掘りしたくはないからです。理由の2点目は、この「観察対象の意見」についての話は客観的な外部の視点からの分析であり、「私自身の意見の表明」ではないからです(自分の意見ではない他者の意見で、自分が批判されても、困ってしまいます)。

 当段落以降は余談ですが、私が貿易摩擦に拘って解説したのには、個人的な背景事情があります。かつて、1999年7月から3年間、通商産業省(途中から、現・経済産業省)所管の特殊法人(当時。現・独立行政法人)「新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称:NEDO)」に社外出向して、通産ファミリーの一員として国の石炭政策(石炭業界産業政策)の行政業務に従事し、国内最後の大手坑道堀り炭鉱2山(太平洋炭礦(株)松島炭鉱(株)池島炭鉱)の閉山に立ち合い、「行き場の無い失業の発生」を防げなかったという行政パーソンとしての敗北体験を味わいました。上述したとおり「新たな産業を創出して、そこに雇用を移して痛みを和らげる」という見地からは、いけないのは「失業の発生」自体ではなく、「行き場の無いこと」です。このため、経営学徒としての私は、この敗北体験以降は、研究テーマが地域産業振興の研究に変わりました。

 我が国(日本)の石炭産業は石油に敗れたという「世間での常識」は末期においては誤り(=事実どおりではない)であり、鉄鋼業におけるコークスの原料や、当時は電力自由化の風潮の下で最も安価な発電が可能な石炭火力発電の燃料の需要があったため、実は石炭の需要量自体は年々増加していました。ただし、国外の安価な海外炭(輸入炭)に比べて国内炭は高価であり、国外炭鉱との市場競争に敗れたという経緯が、我が国から大手坑道堀り炭鉱が消えた最終局面での理由です。実はこれは、貿易摩擦の原因となる現象と、全く同じ現象です。このことが、私が貿易摩擦に拘って解説した理由になります。

 トランプ大統領が、票集めだけの理由にとどまらず、本音でも白人貧困者労働階層への思いがあるのならば、その志は、「日本の産業における私の思い」の米国版です。したがって、その志自体がいけないのではなく、経済学、国際政治学、経営学等の学問への理解が不足しているために、「処方箋」を書き間違えていることがいけないのだと思います。政治は志の高さは必要条件ではあっても十分条件ではありません。思いが正しくても、学問的背景が不足していれば、判断ミスをもたらしかねません(このことは政治以外の場合も同様であり、教養が必要な理由だと思います)。トランプ大統領に対しては、保護貿易に走るのではなく、私や、私の「研究仲間(兼)研究上の諸先輩やライバル」達が目指している「新たな産業を起こして、そこに雇用を移す」方向での処方箋を書いて欲しいと思うのです。


◎ 地域産業振興に関する、私の共著,学術論文

○ 博士学位論文

・ 神山卓也「地方都市の地域産業振興 - 産業構造の変化に対応していかに地域が生き残るか:鹿児島の観光食料産業クラスターと創業支援を例にして -」(高知工科大学大学院起業家コース博士学位論文,2007)

 

○ 共著

IT活用で地域が変わる








 

木の葉、売ります








 

○ 学術論文

・ 神山「地域のマーケティングにおけるITと経営革新-SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」(『日本情報経営学会誌』,2008年09月,Vol.29,No.1)pp.22-29

・ 神山「地域SNS発のまちおこしに関する事例研究」(『日本情報経営学会誌』,2009年11月,Vol.30,No.2)pp.12-21)

 

 

◎ 本件に関係ある内容について紹介する他の方のブログ日記記事

(今後メンテナンス予定)

 

 

(今日の日記内容とは無関係ですが)
<社会人向け夜間 or 土日開講大学院の母校のPR>

東洋英和女学院大学大学院
東洋英和女学院大学大学院は、社会人向け夜間共学大学院です。人間科学研究科と国際協力研究科(旧・社会科学研究科)とがあります。

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温泉天国・鹿児島温泉紹介!
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・ 神山(2007)「地方都市の地域産業振興 - 産業構造の変化に対応していかに地域が生き残るか:鹿児島の観光食料産業クラスターと創業支援を例にして -」  高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻(起業家コース)博士学位論文.

 

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